やりすぎケアを自覚していない人は多い

自分の肌というものを客観的に意識する10代ごろから、女性はスキンケア道に踏み出します。

はじめて自分専用の洗顔剤を買い、化粧水や乳液をおそるおそる肌につけてみる…そうやってケアをひとつずつ身につけていくうちに、気がついたらスキンケア歴10年、20年、あるいはそれ以上の超ベテランになっているわけです。

ところが、長くやってきたわりには、同じことのくり返しで、本質的にはほとんど上達していない人たちが、年齢にかかわらず少なくないのです。

今の肌をもっときれいにしたいと考えたとき、多くの人が、何かやるべきことを増やすことで変えようとしてきたと思います。

それによって、肌は見違えるほど大きく変わりましたか?

もし、良い変化を感じられたのなら、きっとそれは今のあなたに合ったスキンケア方法です。

そのままつづけられていいでしょう。

もし、あまり効果を感じられないことが多かったとしたら、今度は足し算のスキンケアよりも、「引き算のスキンケア」をしてみてほしいと思います。

スキンケアのやりすぎで肌を疲れさせている人、本来の肌機能を邪魔してしまっている人は、本人の自覚がないだけで意外と多くいます。

たとえば、肌がほんのり赤くなるまでパッティングする、化粧水や乳液をつけると肌がピリピリと泌みる、しっかり洗顔してもすぐ脂っぽくなってしまう…

そんなトラブルは「スキンケア過剰」から起こっていることがあります。

これだけスキンケアを頑張っているのに、肌がきれいにならないとしたら、肌がほんとうに待ち望んでいるのは入念なケアではなく、むしろ「手抜きケア」だったのかもしれません。

最近の傾向として、多くの方にみられるのが「洗いすぎ・こすりすぎ・保湿しすぎ」です。

毛穴の奥まで徹底的に汚れを落として、化粧水を叩くようになじませ、たっぷり保湿しておけば、肌はきれいになると思い込んでいる人があまりに多いのです。

これらのケアは一歩間違うと、肌の負担になります。

このスキンケアのいきすぎ状態…「洗いすぎケア」「こすりすぎケア」「保湿しすぎケア」、これをわたしは〈3すぎ〉と呼んでかたくいましめています。

しかも、ほとんどの人は自分が過剰ケアをしていることに、おそろしいことに気づいていないのです。

無意識のうちにやっている〈3すぎ〉で、肌のきれいを奪ってはいませんか?

まずは日々のスキンケアで、知らずしらずのうちに〈3すぎ〉をしていないか、チェックしてみてください。

洗いすぎケア「しっかり洗顔」は肌の体力を奪う

〈美肌の基本は、洗顔にあり〉…そうかたく信じ込んで、皮脂や汚れを根こそぎ落とそうとする、洗顔信仰におちいっていませんか?

とにかく毛穴の奥から汚れや皮脂を根こそぎ洗い落とせば垢抜けて透明感あるピカピカの肌に生まれ変わるはず、と幻想を抱いている人が少なくないようです。

でも、現実はそんなに単純じゃありません。

わたしが皮膚科で日々診察していると、洗顔のしすぎが原因で敏感肌や乾燥肌、吹き出物など皮膚のトラブルを抱えている患者さんが多くみられます。

顔の皮脂盆は、女性だったら10代でピークに達したあとは、年齢とともに減少していくはずです。

ところが、あまりに皮脂を敵対視するばっかりに、そうとはまったく気づかず、20代以降も、一日に何度も「しっかり洗顔」をしつづけてしまう人がとても多いのです。

とくに洗顔料を毎回使ってこするように洗うと、洗顔料で皮脂をごっそり落とし、さらに、こすることでまだ取れなくてもよい角質層まで取り去ってしまうことになります。

むしろ、洗顔で大切なのは、皮脂を落としきらないこと、必要な角質層をきちんと残しておくことなのです。

なぜならば、皮脂や角質層を奪われた肌は、大切なバリア力まで崩壊してしまうからです。

外界との最前線に立たされる角質層は、皮脂と力を合わせて強力なバリアをつくり、保湿力を保っています。

ところが、いきすぎた洗顔をすると、それらのバリアを容赦なく引きはがし、保湿力を低下させてしまいます。

皮脂と角質貯を奪われた肌はまさに荒野と化します。

大地をおおう木も草もなく、風や太陽をダイレクトに受けて、あっというまにひからびて、ヒビ割れてしまう…そんなイメージです

いっそ洗わないほうが肌への害は少ない。

こんな無防備で殺伐とした状態になってしまったのが「洗いすぎ肌」です。

洗いすぎ肌は、化粧水が泌みたり、お化粧品で肌が赤く腫れるなどのトラブル誘発肌へとつながっていきます。

乾燥肌、あるいは敏感肌という人の多くは、じつは「洗いすぎ」が原因であることが少なくありません。

そんな人は、まず洗顔をひかえめにして数日過ごしてみてください。

2、3日洗わずに過ごしても大丈夫。

あるいはお湯や水で洗うだけにすれば、肌は回復のチャンスを与えられ、肌の調子がおのずと整ってくるはずです。

毎日顔をきちんと洗わないと、肌トラブルになる!と思い込んでいる人はとても多いのですが、肌を洗わないがために皮膚トラブルを起こす人というのは、じつはほとんどいません。

わたしは皮膚科医として30年来、患者さんを診ていますが、その間、数人いたぐらいで、それもトラブルとはいえない程度の症状です。

たとえば、高校生の女の子が思春期の心の問題を抱え、ずっと肌を洗わなかったためにお母さんが心配して連れてきたことがありました。

胸のあたりに茶色いシミができていましたが、これは垢が皮膚にこびりついたものなので、アルコール綿で拭きとってやれば、きれいになってしまいます。

一応、「垢つき病」という病名を与えることはできますが、だから皮膚にとってどうということはないのです。

皮膚は、多少洗わなくても、そんなに困ることは少ないのです。

むしろ、洗いすぎたときのほうがトラブルが起こりやすくなる…そう覚えておきましょう。